迷走女に激辛プロポーズ
ハァ、コヤツ突然何を言い出すのだ!
馬鹿なことを言ってないで、さっさとビールを受け取れ、と佑都を見る。

そこで気付いた。タオル奥の瞳はアルコールで潤んでいるものの、その眼差しは真剣だと。

だから口に出さず言ってやる。
お主は既に『キスできる男性』と認定されておるぞ、と……。

佑都は黙ったままの私に、もう一度聞く。

「キスしてみる?」

真剣な眼差しに妖しい熱が帯びる。

グッ、と息を飲む。止めろ! 突然そんな目で見るな! 崩落しそうだ!
私は狼狽え、彼の眼差しを避けるように顔ごと視線を逸らす。

だが、佑都はそれを許さなかった。私の顎を掴むと自分の方に向けクイッと持ち上げる。

「なぁ、確かめろよ。今からキスするから」

宣言と共に、彼の唇が私の唇に重なる。その瞬間、体の中を電気が突き抜ける。
――数えてはいない。だが、唇が触れていたのは三秒ぐらいだと思う。

「――どう、嫌だった?」

覗き込む彼の瞳に不安が過る。

ゆっくり首を横に振る。その途端、喜びに満ち溢れる瞳。満面の笑み。そして、はしゃいだ声が言う。
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