その気持ちは嘘じゃない
夕暮れ時、僕は公園のブランコに座って静かに涙を流している女の子を見た。
女の子は僕よりも年上で、どこかの高校生のようだった。
僕はその女の子のことをじっと見つめてしまっていた。
女の子の何かを決意したような目が、涙のせいできらきらと輝いているのが僕には綺麗に見えた。
女の子は僕のほうに顔を向けた。
驚いたような顔をして、ぐっと袖で涙をぬぐって僕のほうに歩いてきた。
「もう夕方だから、おうちに帰ったほうがいいよ」
やさしく笑った女の子は僕を家に帰るようにさとした。
「お姉ちゃんは?家に帰らないの?」
そう聞くとお姉ちゃんは困ったように笑った。
「私も家に帰るよ」
嘘だ。子供ながらにそう思った。
「お姉ちゃんの家まで僕がついていく!」
「えっ!?」
お姉ちゃんは困った顔をした。
「じゃあ私が君を送っていこう。そうしたら君は無事におうちに帰れるでしょ?」
「…分かった」
あまり納得は出来なかったが、僕がお姉ちゃんを送っていったら遅くなってお母さんに怒られてしまうかもしれない。
それは怖い。
「さぁ、君のおうちにいこう」
お姉ちゃんは自分の学生鞄を背負って、公園を出て行った。
僕もそれに続いて、お姉ちゃんの横に並ぶ。
「お姉ちゃんは、どこの学校なの?」
「北高かなっていっても場所分からないよね」
「…うん」
しばらく歩く。
「お姉ちゃんは何でさっき泣いてたの?」
お姉ちゃんは苦笑いをした。
「もう、君はデリカシーってやつがないなぁ。秘密だよ」
僕は道路の曲がり角を曲がる。
「でも、お姉さん何か心に決めたでしょ?」
「…勘が鋭くて困っちゃうね。どうしてそう思ったの?」
「お姉さんがあまりにも綺麗な目をしてたから…」
お姉さんは笑った。
「変わった子だね」
変って言われた。なんで?僕は素直に答えただけなのに。
「君は小学生だよね?何年生?」
「僕は小学校4年生」
「そうか、学校は楽しい?」
「楽しいよ!お友達もいっぱいいるんだ!」
「…それはよかったね」
お姉ちゃんはどこか寂しそうな顔をした。
「あ、僕の家ここなんだ!」
指差すと、お姉ちゃんは笑って手を振った。
「じゃあね」
でも僕は今ここでお姉ちゃんとバイバイするのが嫌で、僕はお姉ちゃんの名前を聞いた。
「ねぇ!お姉ちゃんの名前ってなんていうの?」
「私?私はね、理恵って言うんだよ」
「僕は和馬!また遊んでね!」
そう言うとお姉ちゃんはもう一度手を振った。
「またね」
お姉ちゃんからその言葉が聞けて、僕は満足した。
「またね!」
そういって玄関の扉を開けて、僕は笑顔で言った。
「ただいま!」
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop