あなたとホワイトウェディングを夢みて

「茶だ」

 湯呑みを二つ掴んで運んできた郁未のお茶はとても美味しそうな緑茶。留美の目の前のテーブルに置いた湯呑みは鮮やかな緑色だ。だが、茶葉が多すぎたのかかなり濃いめのお茶に留美は湯呑みを取る手が止まる。

「どうした? 飲まないのか?」

 自分の湯呑みを口に運んだ郁未だが、一口ゴクンと飲んだ後、湯呑みを暫くジッと眺めていた。

「……」

 郁未はテーブルに置いた留美の湯呑みを手に取り、『淹れ直す』と言って台所へと行ってしまった。
 郁未にとっては生まれて初めて緑茶を淹れる経験をしたのだろうと、クスッと笑って留美が郁未にアドバイスをする。

「湯呑みの緑茶を半分に減らして、それにお湯を足せば丁度良いと思うわ」

 茶の間から聞こえてきた留美のアドバイス。
 郁未が振り返ると、にっこり微笑む留美が郁未を見ている。屈託なく優しそうな笑顔に郁未は耳朶まで赤く染まる。

「それくらい俺にも分かっているさ」

 流し台の上に湯呑みを置いた郁未は、急須の蓋を開けて中の茶葉を確認した。急須の半分くらい茶葉が占めているのを見て、これは多すぎたのだと反省する。
 そして留美のアドバイス通りに湯呑の緑茶を薄めた郁未は、流し台の横の方にトレーが置いてあるのに気付き、今度はそのトレーで湯呑みを運んでいく。

「美味しそうなお茶だぞ」

 そう言って、自分の湯呑みを手に取るとトレー毎テーブルの上へ置いた。
 確かに郁未の言葉通り、とても美味しそうな鮮やかな緑茶が出来上がっていた。
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