あなたとホワイトウェディングを夢みて
結局、他の女性同様に留美もまた郁未にされるがまま。
病院で処方された薬を持って、最低限の荷物の財布と携帯などを入れた小さめのバッグだけを手に留美の部屋を後にした。
郁未に抱きかかえられた留美は、アパートの敷地内の空きスペースに駐車していた郁未のセダンに乗せられた。
前回の郁未のスポーツタイプとは異なる車種で、今回はファミリー向けのセダンタイプ。落ち着きのある国産車だ。
郁未の外見からは想像も付かない程に、車内の内装も落ち着いた雰囲気の車だ。
「今日はスポーツカーじゃないのね」
「留美にはこっちの方が似合いな気がしてね」
それはどう言う意味だろうかと、不可解な留美は頬を膨らませてムスッとする。
窓の外へ視線を向けると、横目で車内の様子を窺う。
毎回車種が異なっているのは、誘う相手に合わせた車を用意しているのだろうかと、マスコットやカーアクセサリーがどこかに飾られていないかと探す。けれど、見れば見るほどに、販売店に並ぶ新車のようにピカピカと光り輝いていて、クッションも良く座り心地も最高だ。そして何より新車の匂いが漂ってくる。
会社の専務ってそれほど高収入の仕事なのだろうかと、考えている内にウトウトとし出した留美の瞼がだんだんと重くなって行く。
仕事のストレスなのか、或いは郁未とのディナーに緊張したからなのか、病院から戻った後の一気に押し寄せてくる疲労感に留美は意識が遠のいていく。