あなたとホワイトウェディングを夢みて

 車を走らせ運転に集中していた郁未だが、助手席の留美が静か過ぎて、信号待ちで停車した時に留美の様子を窺う。
 シートに深く座った留美は窓の方へ顔を向け、郁未からは表情が読み取れない。症状が悪化したのだろうかと、肩を掴んで軽く揺すると、留美の頭がカクンと項垂れる。

「気分が悪いのか?」

 身を乗り出した郁未が留美の額を押し上げた。すると今度は郁未の方へ身体全体が寄りかかる。

「留美、大丈夫か?」

 郁未が声を掛けても、スヤスヤと寝息を立てるだけで留美は反応しない。気持ち良さそうに眠る留美の顔色はほんのりピンク色で、唇も健康そうな温かみのある色と艶だ。
 このままベッドで組み敷きたくなる留美の姿に郁未は体調不良ではないと分かり安堵する。
 そして、信号が青に変わるとアクセルを踏む。
 眠る留美を気遣いスピードを上げずに、標識の制限速度五十キロで車を走らせる。出来るだけ静かに、安全運転を心掛け、留美の身体がこれ以上倒れ込まないように注意深く運転を続けた。
 そして、車を走らせること三十分あまり。
 郁未が所有するマンションへ到着する。
 大所帯の会社を経営する社長の子息に相応しいセキュリティ万全の高級マンション。敷地内の所定の場所に車を駐車した郁未はエンジンを停止する。
 運転席から降りた郁未の姿を、あらゆる角度から撮影する監視カメラの音が微かに郁未の耳に届く。
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