あなたとホワイトウェディングを夢みて
駐車スペースも防犯上常に照明が灯され、昼間のような明るさを保っている。
煌めく星空を見上げた郁未は、胸ポケットから携帯電話を取り出し電話をかけた。
「今帰ったが、女性を一人連れてきた。彼女は眠っているからキーを解除してくれ」
留美を抱えたまま玄関ドアのキーの解除やドアを開けるのは至難の業。映画のように簡単に出来れば様になるだろうがと、フッと笑みを零した郁未は、電話をポケットに戻すと留美を抱き上げて行く。
エントランスを通り抜けたところ、連絡を貰った家政婦が慌ててやって来た。
「まあまあ、坊っちゃん、おかえりなさいませ」
顔色は悪くないがグッタリしたように眠る留美を見て、家政婦が驚きで興奮する。
「まあ、どうしましょう!」
「ここへ向かう途中、車中で寝てしまったんだよ。彼女のお腹に乗せてるバッグを頼む」
薬や携帯電話などが入った、留美の小さめのバッグ。今にも落ちそうなそのバッグを家政婦が手に取る。郁未は家政婦に手伝って貰いながら部屋へと帰って行く。
自分の寝室へ運んだ郁未は、留美を自分のベッドへ下ろし自分も隣に寝そべる。
こんな時、洋画では簡単に女性を抱き上げるシーンが流れるが、あれは絶対にヤラセだと叫びたい郁未は、少し息を切らして留美の寝顔を見つめた。
「体重減らせよ……」
そう文句を言いながらも、留美を見つめる郁未の瞳は優しかった。