あなたとホワイトウェディングを夢みて
(ああ、なんて素敵な夢なの。専務似って言うが残念だけど)
けれど、寝顔の郁未はとても魅惑的で留美の心臓を矢が射抜く。
(これは夢よ……)
静かに寝息を立てて眠る郁未の隣に寄り添う留美。
郁未の寝息を頬に受けながら、郁未の胸に手を乗せる。呼吸する胸が大きく揺らぎ、温かな肌が心地良くて留美は頬を胸に当てる。
(心臓の音がはっきり聞こえるわ。とても温かくて気持ちいい)
「る……み」
微かに聞こえた自分の名前を呼ぶ声。
夢なら名前を返すべきと顔を覗き込んで『郁未』と囁く。
「留美」
今度ははっきりと自分の名前を聞き取れた。
それだけの事なのに、何故か嬉しくなってしまう。憎っくき専務が夢とは言えど、寝言で自分の名前を呟くシーンは最高だと頬にチュッとキスした。
温かな郁未の肌が夢とも思えず、けれど、夢でなければ美女ばかりを相手するプレイボーイの郁未がベッドに裸を晒して眠るはずがない。
自分の姿は相変わらず、いつものピンクのジャージ姿なのが笑える。折角の夢なら、総レースのスケスケネグリジェでも着てれば良かったのにと苦笑する。
「郁未」
夢なら何をしても許される。そう思えた留美は名前を囁くと、郁未の唇を味わいたくなる。
たくさんの女たちを愛した唇。留美も何度もキスされたが、その感触は毎回驚き過ぎて味わう暇などない。けれど、夢の中の今ならば郁未を感じられると、留美は郁未の唇に自分の唇を重ねた。