あなたとホワイトウェディングを夢みて

 軽く触れるつもりで重ねただけなのに、柔らかな唇が愛しくて胸がキュンとしてしまう。

(ああ、夢なのに凄くリアルだわ)

 現実世界で自分の唇と郁未の唇が触れ合っているよう。キスがこんなに素敵と初めて知った心地だ。すると、郁未の唇が動き始める。

(専務にキスして貰いたいって気持ちが通じたのかしら?)

 これが夢でも嬉しいと、留美の返すキスが深まり郁未を求めていく。
 郁未の胸に手を添えた留美は、胸から伝わる呼吸する振動や、脈々と流れる心臓の鼓動がとても心を落ち着かせる。それどころか、気分を高めもっと郁未を感じていたくなる。

「留美」

 いつもの郁未の甘い囁き。
 夢なのにまるで現実世界のように耳に聴こえる。
 もっと囁かれたくて重ねる唇の動きが淫らになる。

「あ……留美」

 郁未の荒い呼吸。現実の郁未もこんなふうに感じてくれているのだろうか。
 夢現なキスなのに、触れる唇や舌が熱くて激しくて夢とは思えない。
 すると、郁未の生暖かな吐息が唇に吹きかかり、背に腕を回され抱きかかえられると、クルリと上下に体勢が入れ替わる。
 郁未に身体を回転させられ、まるで宙を舞ったような感覚に留美の胸が弾む。

(夢なのにリアル過ぎて怖いくらい。なのに、専務が相手なんて、そんなに専務のこと考えていたのかしら?)

 瞼が重々しくてぼんやりする留美だが、目の前の郁未の姿が鮮明に瞳に映る。
 そして重なる唇だけでなく、郁未の身体の重みが生々しくて、生身の郁未の匂いが漂い留美の鼻を突く。

「夢じゃないの?」
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