あなたとホワイトウェディングを夢みて
「俺のマンションだ」
郁未のマンション。それは、多くの女性らがここで一夜を過ごしたベッドではないのか――
留美はクイーンサイズはあろうかという大きなベッドを見つめた。すると、留美のその反応が何を意味しているのか理解出来た郁未が咳払いをする。
「言っておくが、ここに女は連れ込んでいないからな」
「……」
そのセリフはプレイボーイな郁未からは想像もつかず留美は驚きを隠せない。
「俺のマンションへ連れてくれば、女達は誤解するからな」
きっと社長子息の妻の座を狙う女性が後を絶たないのだろうと、留美が同情する。
しかし、結婚する気もないのに次々とベッドに誘うのは如何なものかと、厳粛な家庭で育った留美には理解し難い。けれど、家庭環境の違いだけで、相手を一方的に非難するのは意に反する。ここは郁未の気持ちも十分酌み取る必要があると、今ではそんな気さえ沸き起こる。
「それはさておき、これから俺は会社へ行く。けれど、君はここでしっかり身体を休めてくれ」
「いえ、もう大丈夫ですから」
郁未の自宅マンションならば長居は無用だ。しかも、女性を誰一人として連れ込まないと聞かされれば尚更のこと。これ以上郁未に優しくされると誤解してしまうと、首を横に振る。
「何を言う。昨日倒れたんだぞ。今日は大人しくここで過ごせ」
「だったら自宅で休みますから」
この部屋もだが、一刻も早く郁未の腕から逃れたくて両手で郁未の胸元を押し退けた。けれど、一向に離そうとしない郁未はますます抱きしめる腕に力を入れる。