あなたとホワイトウェディングを夢みて

 留美は小さな子供ではないのに、どうしても気になる郁未はアクセルを踏みマンションへと急ぐ。
 それでも制限速度を順守する運転を心がけているが、赤信号で停止するとそれだけマンションへの到着が遅くなり苛つく。

「まだ青にならないのか」

 信号待ちは余計に留美の顔を見たいと思わせる。
 ベッドに大人しく寝ていないまでも、マンションで静かに過ごしているのか気がかりな郁未は、上司として責任を感じているだけだと呟く。留美に胃痛の原因が自分と言われた事が少し気に障っていた。
 なかなか青に変わらない信号に、ハンドルを叩いて八つ当たりしそうになると、歩道を歩く留美の姿が目に入る。

「留美?」

 何故、街中の歩道に留美がいるのか。それも、隣には郁未の親友で女に超手が早いあの聡がいる。しかも、聡は留美に寄り添い、まるで恋人同士のように肩を並べて歩いている。おまけに留美は天女のような笑顔で聡を見つめている。
 郁未は胸ポケットから携帯電話を取りだし、履歴から聡の番号を探し出しボタンを押した。しかし、電話口から聞こえてくるのは電源が入っていないとのメッセージだ。
 携帯電話の電源をオフにする意味があるのか、聡の行動は理解出来ない。ましてや、留美は賭けのターゲットだと唯一知る人物だ。それを承知で誘い出したのには余程の理由がなければ許さない。
 静養せずに出歩く留美以上に、郁未は聡へ怒りを露わにする。
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