あなたとホワイトウェディングを夢みて
「あんな女……ただの賭けの対象なんだ」
腹立たしくなる郁未は、上着のポケットから携帯電話を取り出し着信履歴を確認した。けれど、聡からも他の誰からも何の履歴も残っていない。余計にそれが胸を熱くし苛立たせる。
「くそっ」
そう叫びながら電話をベッドに投げつけた郁未は、ベッドから下りると電話を放置したまま寝室から出た。リビングルームでいったん足を止めて部屋を見渡すが、そそくさと廊下へ出て行き、一階にあるラウンジへと足を運んだ。
そこは、見事な竹細工のオブジェが和の世界を繰り広げ、訪れる者の心を癒やすそんな空間の中にテーブルと椅子が並ぶ。郁未も竹の爽やかな香りと和の空間に苛立つ心を和ませる。
ラウンジを奥へ進んでいくと周囲からの視線を集める。女性客らの恍惚とした顔が郁未へと向けられる。毎度の事ながら玉の輿を狙う女達の目にウンザリする。
そんな中、いきなり聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「あら、郁未じゃない。久しぶりね」
声をかけてきたのは、つい最近まで付き合っていた女性だ。相変わらずの妖艶なドレス姿に郁未の胸がドクンと弾む。やはり女は豊満な体でそれを惜しみなく曝け出すドレス姿に限ると、唾を飲み込む。
留美も聡と楽しい時間を過ごしているのだったら、自分も同じ時間を過ごして何が悪いと、開き直る郁未は『部屋へ行かないか』と女を誘う。
女は頷くと郁未の腕に素早く抱き着く。腕を組んだ二人は郁未のスィートルームへと消えていく。