あなたとホワイトウェディングを夢みて
「情報処理課には鈴木課長ともう一人プログラマーが居るだろう。二人に最優先でその作業させれば良いだろう」
「ですが、鈴木課長からの報告では会議に間に合わせるのは無理だそうです」
今日は留美が欠勤し、情報処理課は実質もう一人のプログラマーがメインとなって作業をしている。手が足りなければ留美へ連絡が行くだろうが、肝心の留美の携帯電話を郁未が壊した。
「今から行く」
まずは現場の状況を把握する為に会社へ向かうと、秘書にそう伝える。
ビジネススーツ姿に戻ろうとクローゼットの扉を開けたものの、スーツから微かに匂ってきた女の香りにスーツをハンガー毎ベッドの方へ放り投げた。舌打ちした郁未は、他のスーツを取り出し着替えを済ませると、急ぎタクシーを呼び会社へと向かう。
会社に到着した郁未は、自室である専務室へは行かずに情報処理課へと行く。
情報処理課では課長と田中の二人が、正常に稼動しないプログラムのチェックを行っている。そこへ、駆けつけた郁未が、二人から今の状況を聞き出す。
すると、田中が気まずそうな顔で言う。
「このプログラムは佐伯さんが作成したものなんです。それで、定期的にチェックを入れているはずなんですけど、そこで不具合が起きたようです」
留美の担当するプログラムの不具合だ。その話を聞いた郁未は留美が情報処理課のお荷物になっているのかと疑う。確かに留美は数日前も単純なミスを犯した。やはりこれが留美の能力なのだろうかと郁未は混乱を来す。
すると、横から課長が追い打ちをかけるように言う。
「専務、申し訳ありません。佐伯君が独断で一部プログラムを変更していたのですが、それが誤作動を起こしているようでして」
留美一人の仕業と聞き、やはり留美にプログラマーとしての能力に欠けるのではと疑わざるを得なくなり、郁未の胸の内は騒々しい。