あなたとホワイトウェディングを夢みて
「佐伯さん、いつもと様子が違っていたのに任せてしまった私のミスだわ」
このようなミスを防ぐ為に情報処理課では日頃から単独での作業を避けている。なのに、田中は留美に任せたまま自分がチェックを怠ったと郁未へ詫びる。
「体調不良ならそうだと言えば私も田中君も手伝ったのに。これは佐伯君の落ち度じゃないのかね?」
留美を思いやる田中の言葉を否定するように課長が不満げに呟く。しかし、課長に反し田中は留美を擁護し『協力し合わなければいけなかったんです』と自らの落ち度のようにも言う。
けれど、そんな田中の言葉に首を縦に振らない課長は、留美が独断で作業を進めたことを非難しはじめた。
二人の言い合いを目の前で聞いていた郁未は、どんな経緯であろうが、結果としてこのような状況に陥っている。正当な理由があるにせよ、体調管理を怠った留美の落ち度であり、同僚や上司に協力を求めるべきだったと、協力しなかった田中を責められないと郁未はそう思えた。
「分かった、もういい。それでその不具合は明日の企画会議までに修正出来そうなのか?」
「はい、必ず間に合わせます。最初は不具合箇所が分からずに戸惑いましたが、佐伯さんのデスクに資料が残っていたので何とかなると思います」
田中の言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろす郁未だが、今回のこの騒動は留美の体調不良によるもので、その体調不良の原因が例の胃痛であれば郁未は自分にも責任があるように思えてならない。だが、昨日今日の胃痛がプログラムに直接関係しているとは考えられず郁未は拳を握りしめる。
それでも郁未は自然と留美を庇うようなセリフが出る。
「部下や後輩のミスは上司や先輩社員の君らがフォローするのは当然のことだ。それに、佐伯は体調を崩している連絡は一切するな。私は専務室にいるから何かあれば直ぐに連絡するように」