あなたとホワイトウェディングを夢みて
第七章 君が好きだ
午後の社長室。
レザー張りのソファに深く腰掛けながら、右手には携帯電話を持ち、楽しそうに会話を弾ませている俊夫。細長いセンターテーブルに飲みかけのカップを置くとソファから立ち上がり、ビジネス街を一望できるパノラマ窓の前に立つ。
活気溢れるビルを眺め口元が緩むと俊夫の口調も強気になる。
「大丈夫だ、俺に任せろ」
その軽快な口調はまるで息子の郁未のよう。
すると、電話の相手はあまり気乗りのしない口調で言い返す。
「しかし、お前の『任せろ』は昔から当てにならないからなぁ。第一、郁未君ほどの息子さんだ、嫁になりたい娘はごまんといるだろう」
「いいや、俺の眼鏡にかなった娘以外との結婚など認めるものか。昔からの親友で気心の知れたお前と親戚になりたいと俺は今もそう思っているんだ」
俊夫の電話の相手は昔馴染みの友人で、その友人の娘と郁未の結婚を切に願う俊夫だ。そして、自分が思い描いた未来図を思い浮かべながら声が弾む。
「それに今、丁度面白い状況になっているんだ」
「それでは郁未君に申し訳ないしなあ。あんな堅物娘が相手では……」
親友の声がかなり沈む。しかし、この縁談を成就させたい俊夫は自信満々で答える。
「俺に任せておけ」
一方、俊夫の企みなど知る由もない郁未は自室のデスクで頭を抱え込んでは悩ましげな顔を浮かべていた。
『今夜一晩付き合え。それで君の失態を許そう』
何故そんなセリフを突きつけたのか。
今回のプログラムの失態は留美が一人で招いたのでは無いと知りながらも利用してしまった。留美を手に入れる為に。郁未は断れない状況へ追い込んだ事に罪悪感を抱く。