あなたとホワイトウェディングを夢みて
あの後、専務室から情報処理課へと戻った時、先輩の田中からプログラムの修正箇所について教えられた。留美は自分がミスを犯しプログラムに不具合が起きたと思い込んでいたが、実は課長が手を加えたことが原因なのだと知らされた。
『今、課長が席を離れているから言えるのだけど、今回の不具合は全て課長に責任があるわ。本来なら減給ものよ』
ただでさえ多忙な部署なのに部下の足を引っ張る困った上司と、田中が課長の悪口を留美に告げ口した。日頃から軽口は叩くが、あまり人の悪口を言わない田中が珍しいこともあるものだと、留美は田中の話に耳を傾ける。
今回の件でプログラムの才能が無いと判明した課長に田中はかなり厳しい顔をする。
『叱られたけど、専務からは特に責任を問われることは無かったわ』
田中の言葉を思い出す留美は、照明の灯を受けてキラキラと煌めくドレスを見つめフッと笑う。
「結局課長の責任を、私に今夜取れってことよね?」
どんなに責任が課長にあるとしても、もともとプログラムを組んだ自分の責任だと思われているのだろうと、留美は怒りの矛先を誰に向けて良いのやら頭を痛める。
勝手に人のプログラムを弄っては不具合を起こした課長に腹を立てるものの、業務上のミスを自分の体で償わせようとする郁未への怒りもある。
今夜の為に着飾れと言われ、簡単に着替えを済ませるなど出来ない留美はベッドに腰を下ろしたまま根を生やしたように動かない。
そして時間は刻々と過ぎていき、会社では業務終了の時刻となり郁未は退社すると留美のアパートへ向かう。