あなたとホワイトウェディングを夢みて
第九章 蜜月なふたり
島へ降り立った郁未はあてもなく車を走らせても時間の無駄だと思い、港にあるお土産売り場へと行った。
売り場前の広い駐車場には乗用車がニ、三十台と、大型車が数台駐車できるスペースがあるが、今はがらんとしている。郁未の真紅のスポーツカーが異常に目立つ。
週末やイベント時は観光客で賑わうのだろうかと辺りを見渡すが、島の中央が小高い丘のような山があるだけで、麓を走る道路は沿岸道路となっていて、実に小さな島で大勢の観光客を呼び寄せる観光地とも思えない。
道案内の看板らしきものすら見当たらず、観光客の姿もなく寂しい港だ。
(本当にこの島で間違いないのか?)
少し不安に感じた郁未は取り敢えず土産売り場の店舗へと入って行った。
外観もそうだったが、お世辞にも洗練されたとは言えない店内だ。木製の長台にお土産品が所狭しと並んでいる。
あのポスターとはあまりにも不似合い過ぎて、島の名前を間違ったのではないかと疑い始める。
「何かお探しですか?」
これまた売り場に不似合いな清楚な店員が郁未に声を掛けてきた。
エプロン姿の年配の女性だが、ウェーブした栗色の髪の毛を後ろで束ねていて、優しい笑顔の人だ。
「この島にホテルか旅館はありますか?」
留美もここで一泊するつもりならば宿泊先を調べるはずだ。部屋の確保は勿論のこと、留美を探す手間も省ける。
だから、いつものように、笑顔を向けて留美の居所を探ろうとした。
すると、女性の後ろから小さな女の子が顔を出した。
「カッコいいね、お兄ちゃん。芸能人なの?」
小学校低学年くらいの女の子が頬を赤く染めて郁未の顔をジッと見る。自分の笑顔がこの年齢の子にまで有効なのだと理解した郁未は苦笑しながら女性店員にもう一度質問した。
「こちらに宿泊施設はありますか?」