あなたとホワイトウェディングを夢みて

「白い……」

　ポスターの撮影場所とよく似た砂浜が目に入る。しかし、ポスターの背景に写っていたのは南国の島らしく絹のような砂浜とエメラルドグリーンの海。
　ここから見える海は、砂浜こそ美しい砂浜だが、海面は淀んだ色をしている。やはり南国の風景とは違う。

「本当にこの島で良かったのか？」

　ポスターの撮影場所にはほど遠い海の光景に溜め息が出る。南国の島とは漂う雰囲気が異なっても、砂浜の白さには心引かれる物がある。
　すると、前方に砂浜に下りて行く階段と駐車場が見える。

「行ってみるか……」

　折角ここまで来たのだ。留美もこの島へ撮影場所を探し求めているのかも知れない。だとすると、ここが撮影場所で留美がここにいる可能性もある。確率は低くとも確認せずにいられない郁未は駐車スペースに車を停めると、急いで階段を下りて砂浜へと向かう。

「流石に人は少ないな」

　季節は晩秋。海水浴シーズンでなければサーフィンに適した場所でもない。砂浜には数人の人影がチラホラと見えるだけ。
　海面は日の光を浴びてキラキラと輝いているがとても静かなものだ。
　しかも平日の昼間っから、肌寒い海岸で遊ぶ者もいないだろう。郁未は留美の姿を探せなく溜め息を吐きながら水面を眺めていた。すると、連れもなく一人で砂浜を歩く女性の姿が目に入る。
　前方から波打ち際を裸足で女性が郁未の方へとやって来る。留美愛用のジャージとよく似た色のTシャツにジーンズ姿だ。その風体は留美を連想させる。そして、波と戯れているように歩くその女性は大きな帽子を深く被っていた。

（留美じゃないよな？　いや、しかしあの風変わりなシャツ姿は留美そのものだし。だが、なんとなく留美のイメージではないな……）

　会社でのイメージやドレスアップさせた時の留美の印象を思い浮かべ、目の前にいる女性の雰囲気が留美に似ているものの、帽子が邪魔をし彼女の顔は確認出来ない。