あなたとホワイトウェディングを夢みて
留美は先輩の田中と一緒に社員食堂へ向かった。
最近では、社外へとランチへ出かける二人だが、この日は例の水曜日、久々に食べる社員食堂のメニューを相談しながら食堂へ行く。
けれど、食堂へ急ぐ女性社員はやはりランチより専務がお目当ての様で、まるで花見か花火大会の場所取りの勢いで駆けて行く。
「凄いわね……素早いわ。仕事でもあの必死さはないわね」
二人を抜いて駆けて行った、女子社員のあられもない姿を見て田中が苦笑して言う。
「先輩も専務狙うクチですか?」
留美がジッと田中を見つめると、目を泳がせた田中を見て留美は何となく分かってしまった。口に出してハッキリとは言わないが、田中も他の女子社員と同じで専務狙いなのだと。
「結局先輩もミーハーじゃないですか」
「私は違うわよ。専務の顔を間近で拝みたいからって、佐伯さんに着いて行くんじゃないわよ」
それは、専務の顔を近くで見られるからと自分から白状している様なものだ。留美は呆れて溜め息を吐く。
すると、田中が留美の両肩を掴むと、留美の顔を覗き込んで瞳を凝視した。
「せ、先輩、怖いですよ?」
「私はたまには食堂でランチがしたいだけなの、お分かり、後輩クン?」
あまりにも田中が凄んで見るものだから、留美は思わず唾を飲みこんで頷いた。