あなたとホワイトウェディングを夢みて
第二章 プレイボーイはお断わり
通常通り勤務を終えた郁未は帰り支度をし、会社の地下駐車場へ向かった。
いつもならこの後、美しい恋人と楽しい一時を過ごすのに。最悪な事に、父親からは呼び出しの電話を受け、恋人とは別れる羽目に。しかも、業務では留美に振り回され、今日は厄日なのかと頭が痛い。
気は重いが、仕方なく車を実家へ走らせる。
そして、車を走らせること三十分あまり、父親が待つ実家へと到着する。
郁未がリビングルームへ入ると、父であり社長でもある澤田俊夫(さわだ としお)が、グラスを片手に微笑んでいる。
リビングの片隅にある、お気に入りのバーカウンターの椅子に腰掛けながらグラスを口元へ運ぶ。
「仕事の話なら社長室へ呼び出して下さい。早々に対処しますが」
実家にいても仕事モードの郁未。父親の俊夫は自宅に似合いのリラックスした格好をしているが、流石社長だけあって自宅に居ても威圧感たっぷりだ。
「まあ、そういきり立つな」
クリーム色のポロシャツを着た俊夫は、服装に似合わない葡萄酒を注いだグラスを郁未へ差し出す。
「今日は飲むつもりはありません。用がないのでしたら自分のマンションへ帰ります」
「そう言えば自宅マンションへ女を連れ込んではいないそうだな」
リビング中央にある応接セットの三人掛けソファへ腰掛けた郁未が、ソファにもたれ掛かるとネクタイを緩めシャツの襟を広げた。