あなたとホワイトウェディングを夢みて
留美らが社員食堂へ着いた時は、既にそこは何処かの国のハーレム状態と化していた。
社員が百や二百人は入りそうな、南向きの窓ガラスから外の明かりが燦々と入る、とても明るくて清潔な広い食堂だ。
そこの中央に陣取っている集団がいる。
目を凝らして見ると、集団の中央に一人の男性が偉そうに脚を組んで椅子に座っていて、その周りには女性社員がずらりと列を成して集まっていた。
集団からあぶれた女性社員らも負けじと、周囲のテーブルを陣取り、ハーレムの中心を窺っている。
女性の姿しか見当たらない食堂。思わずここは女子高かと留美は息を飲んだ。
しかし、目を凝らして良く見ると、食堂の隅っこに肩身の狭い思いをして男子社員がランチを取っていた。
「先輩、今日って女性専用の日ですか?」
女性社員らのプレートのランチがとても豪勢で、厨房から受け取る男性のプレートが質素に見える。
けれど、横を通り過ぎる男性社員の手に持つプレートは、これまでと何ら変わらない日替わりランチのプレートだ。
「女性専用ランチってないのよね。皆は何を食べてるのかしらね」
田中が、豪勢なあのランチと同じものを食したいと、ランチの券売機を一通り眺めているが、メニューがどれなのか見当がつかない。
「私は日替わりにしますよ」
留美は豪華なランチより、日替わりランチの方が悩まなくて済むからと、券売機にお金を投入すると日替わりランチのボタンを押した。