あなたとホワイトウェディングを夢みて
「あれが新メニューだったら食べてみたいじゃない? でも、券売機のメニューって以前と同じで変わっていないのよね」
新メニューがあればと、田中が必死になってそれらしいメニューを探すが、それらしいモノは見つからず留美と同じく日替わりランチのボタンを押す。
「あ、佐伯さん、待ってよ」
さっさと配膳カウンターへと行く留美の後を追う田中。二人揃ってカウンターに食券を出すと、同時にランチを受け取った。
「早さは日替わりランチが一番ですよね」
いつもなら、プレートには三角または俵おにぎりに、日替わりのおかずとサラダと漬物がある。質素だがワンコインで食べられて、しかもボリュームはそこそこある。男性なら無料でおにぎりの追加が出来る。
なのに、今日受け取ったプレートには更に蟹クリームコロッケとエビフライが盛ってある。それにサラダは普段は一種類なのに、今日はカット野菜の他にポテトサラダも。随分と豪華なランチだ。
「いつから日替わりランチがこんなに豪勢になったんですか?」
留美が配膳スタッフに訊ねると、食券を持ってきた男性社員が日替わりランチを受け取っていたが、これまで通りのランチのプレートだった。
男性社員にプレートを渡したスタッフが答えるには、
「今日だけ特別なんです。女性社員に専務からの心付けです」
日頃仕事に励んでいるのは女性社員だけでない。なのに女性社員の気を惹こうとしているのか、専務のやり方が気に入らない留美はムッと眉間にシワを寄せていた。