あなたとホワイトウェディングを夢みて

「もしかして専務と何か約束したの?!」
「情報処理課始まって以来の大問題を起こしたとか? 課長責任なんてことは?!」

 コーヒーを淹れて自分のデスクへ戻る留美は、話がかみ合わない二人のセリフを完全無視する。
 けれど、鬱陶しい二人を黙らせ様と口を開く。

「課長、専務にデータを渡していますが問題ありません。それから、田中先輩。専務は私に興味は持ちませんから」

 課長は自分の身の保身を気にかけ、田中は専務とラブラブ出来る日を妄想している。
 そんな二人に少しウンザリすると、Web構築課へ異動を願い出たい気分になる。時には残業もあるだろうが、Web構築課なら仕事に夢中になってそれが楽しい日々に思えるだろう。

「他に何か?」

 二人に質問したものの、留美はゆっくりコーヒーを飲みながらパソコン画面に集中する。空いた方の手をキーボードへ運び、カチャカチャとタイピングを始める。
 留美の冷静な態度を見て安心したのか、課長も田中も自分のデスクへと戻って行く。

「そ、そうだよね。佐伯君は優秀な部下だ。実にいい仕事をするからね」

 課長が心にもないセリフを言っていると気にも留めず、留美はカップをデスクに置き両手でタイピングを始めた。
 すると、田中が嬉しそうな声を上げてカレンダーと睨めっこする。

「この日なら安全日じゃないわ。専務を誘っちゃおうかしら」
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