あなたとホワイトウェディングを夢みて
無駄な努力だと呆れた目でチラッと見た留美は、キーボードから手を離しカップを手に取ると、両手で握りしめ大きく息を吐いてカップに吹きかけた。
(本気で異動を希望しようかなぁ。先輩も課長も悪い人ではないのだけど。面倒なのよね)
大きな溜め息を吐いて悩ましげな顔をした留美。
課長も田中も、やはり留美は何か大事なことを隠しているのではないかと疑う。
「課長、あれは絶対に恋する乙女の溜め息ですよ」
「なに言っているんだい、田中君。あれは叱られたんだよ。余程の失態を犯したに違いない」
「んまぁー失態を? 専務に抱きついたのかしら?」
まったく会話として成り立っていないと呆れながら聞いている留美だが、ここでも無視を決め込む。
「課長、専務が佐伯さんに目を付けないように私達で守ってあげましょう!」
「おおっ!」
専務相手に嫌がらせしたのだから、クレームがあるのは想定内。だけど、やはりやりすぎた感は否めない。
くだらないが二人のチグハグな会話が聞こえてくると、意外と留美の心を落ち着かせる。
そして、情報処理課ののほほんとした雰囲気に、完全にヤル気が無くなった留美を睡魔が襲う。午後ののどかな時間に、心地よい眠りに誘われて意識が半分眠りかけていた。