あなたとホワイトウェディングを夢みて

「……君、彼女は昼寝しているのか、それとも具合が悪いのか?」

 データを提出した日も留美は堂々と専務室のソファで居眠りをした。何時間も気持ちよさそうに。
 留美は午後になると居眠りする癖があるのか。郁未は留美の勤務態度に問題が無いのかと疑いの目を向ける。

「いえ、その、彼女は仕事も大変ではありましたが、睡眠不足が原因ではないかと……」

 課長は、留美の上司である自分の管理能力を問われることを嫌って、留美の居眠りは自己管理能力の所為だと必死になって弁明していた。
 無理難題な仕事を押し付けたつもりの無い郁未は、小さな溜め息を吐くと、眠る留美のデスクに静かに資料を置く。

「彼女が目を覚ましたらすぐに専務室へ来る様に」

 それだけ言うと郁未は情報処理課から出て行った。郁未の姿が見えなくなると田中は腰が抜けた様に床に座り込んでは大声で泣き出す。

「田中君? 何があったんだね? 君?」

 状況が飲み込めない課長が田中のところへ寄って行き質問する。

「専務ったら酷いんですよ! お前なんか眼中に無いって怒鳴られたんです!」
「は?」

 田中のセリフの意味が理解出来ない課長は目が点となる。すると、更に田中が声を荒らげて言う。

「週末は私は安全日じゃないから一緒に過ごしてって言っただけなのに」
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