あなたとホワイトウェディングを夢みて
田中の無謀な誘惑から二時間経過したあとの事。
目を覚ました留美がやっと専務室を訪れる。
「随分とゆっくりしたものだな。専務からの呼び出しに催促しないと来ない社員は君が初めてだ」
郁未からの厭味は覚悟していたが、寝起きにイヤな相手から言われるのは精神的にダメージが大きく留美は頭が重い。
「君の代わりに田中がここへ来た。そして週末のデートに誘われたが。もしかしてそのデートの相手は君だったのかな?」
田中の行動が理解出来ない留美は、つい眉間にシワを寄せ溜め息を吐いた。
しかし、田中以上に理解し難い郁未は、何を言いたいのか留美には悩ましい。叱責するのならさっさとすればいいのにと頭を痛める。
すると、郁未が仕事の話へと話題を切り替えた。
「さて、さっき君に収めて貰ったデータだが。業務であんなものを使えないと分かっての事なのかな?」
その件は留美も承知している。郁未を怒らせる為に作成した様なものだ。お叱りを受けるのは覚悟していた。
なのに、郁未の叱責する言葉がいつもより柔らかで、言い方に棘が感じられない。