あなたとホワイトウェディングを夢みて
「はあ、あの……仕事の件ですが……」
郁未を怒らせた表計算は正式なものを作成済みだ。簡単すぎてものの五分とかからない作業だった。それを提出したら郁未の仕事は終わりとなる。
「いや、あれはもういいよ。これ以上君を疲れさせる気はないんだ」
「別に疲れていませんが」
自分が居眠りしていた事を忘れかけた留美。前日の専務室での事も、さっき郁未が情報処理課を訪れた時にも、自分が熟睡していたのを思い出した。
「あ、いえ。居眠りは申し訳ありませんでした」
留美は自分の落ち度でもあるし、いつになく優しい郁未が相手では突っかかる事も出来ず、素直に謝った。
留美に素直になられると、郁未もいつもの調子が出ない。
「あ、いや、良いんだよ。こっちこそ無理させて悪かったよ」
いつもの留美を見ている蔑みの目では無く、郁未が恐ろしいほどに優しいのが不気味で、留美は早く専務室から退散したいとさえ思えてきた。
すると、突拍子もない質問が飛んでくる。
「ところで、君はいつもどんな休日を過ごしているんだい?」
「は?」
微笑む郁未からプライベートな質問をされた。
これは新たな拷問なのかと留美は恐怖に包み込まれる。