あなたとホワイトウェディングを夢みて
「秘書課へ電話したの?」
自分のデスクへ戻るなり秘書課へ電話をした留美に田中が声をかける。
「はい、専務はもう出られたので明日朝一番でデータ提出になりました」
今提出しても、明日一番に提出しても同じこと。
残業してまで内容確認するデータでもないのだと、留美は郁未へ提出するデータを茶封筒へ入れて両面テープで封を閉じると、引き出しの中へ仕舞い込んだ。
「佐伯さん、営業部はどうだった? 随分時間かかったわね」
「折角なのでとことん質問攻めにして来ましたよ。数カ所記載漏れあったので、その辺もしっかり打ち合わせて来ましたから」
留美が営業部で書き加えた指示書を掲げ、添削後の問題用紙の様な赤文字だらけの指示書を見せる。
「随分と抜けてたのね。でも、大事な営業用のフォームだから慎重になって当然よね」
市販品にはない自社独特のシステム作りをするのが留美の受け持つ仕事の一つだ。社の各部署が必要とするシステムを、その業務内容に合わせ、必要に応じて改変しながら作り上げていく。留美には尤もやり甲斐のある仕事だ。
この日、ある程度区切りを付けた留美は帰り支度を済ませ、まだ仕事中の課長と田中に声をかける。
「私はキリが良いので、これで帰ります。お先に失礼します」
留美はやっと今日の仕事から解放され帰路につく。