あなたとホワイトウェディングを夢みて
助手席のドアを開けた郁未が、『どうぞ』と手を差し伸べ、降りる留美の手を引きエスコートする。
ところが、慣れないドレスとハイヒールに苦戦する留美のドレスがはだけ、艶めかしい太股を曝け出す。
しかし、郁未が自らの体を盾にし誰の目からも留美の姿を遮断する。そして、留美の手を引き寄せて車から降ろす。
「素敵」
車から降りた留美の目の前に広がるガラス張りのエントランス。回転ドアが回りながら着飾った淑女や紳士らを歓迎する。
留美が昨日見たホテルとはまた別の高級ホテルへとやって来ていた。暖色系の照明に照らされ、彫刻を施された無機質な柱に温かみが感じられると、それだけでホッとするような温もりを感じる。
大きなアーチを描くエントランス、回転ドアをゆっくり通り過ぎ、しっかり握りしめられた郁未の手に引かれながら玄関ホールへと入って行く。
照明の灯りが反射する大理石の床が眩しくて、柱も壁も、客が寛げるようにと置かれたソファも、全てが豪華過ぎて留美の目には輝かしい。
「せ、専務。もしかして、あそこを通るはハリウッド映画の女優さんでは?!」
豪華なホテルのロビーを普通に歩くゴージャスな女性。だが、ロビーのソファで寛ぐ人らも、受け付けにいる人らも、行き交う人全てがブランド服を装い、ハリウッド女優が目立っていない。
もしや、このホテルは有名なホテルなのだろうかと、郁未の顔を見上げると『君のほうが何倍も素敵だよ』と、歯の浮くようなセリフが返ってくる。