あなたとホワイトウェディングを夢みて
囁きより甘く熱い郁未の瞳に、留美の心臓の音がバクバクと激しさを増す。静まり返った室内では、同席する聡にまでこの心拍音が聞こえてるのではないかと、ますます留美は恥じらいで顔を上げられない。
すると、ワインが運ばれて次々とワイングラスに注がれていく。
ワゴンのワインセラーやワインボトルを包むクロスなど、身近で見た経験がない留美は、ウェイターの動きが珍しく興味を引くと、ウェイターばかりを眺めていた。
すると何故か郁未に握りしめられる手の力が強まり痛みさえ感じる。『痛いわ』と郁未に訴えようとするも、郁未の瞳が急に厳しいものへ変わる。
郁未の急激な顔色の変化に意味が分からない留美が戸惑っていると、真正面に座る聡がクスクス笑って話しかける。
「ねえ、留美ちゃんと郁未の馴れ初めを聞いても構わないかな?」
突然そんな質問をされても答えられるような馴れ初めはない。そこで、郁未と聡の会話が仕事関係だけに感じなかった留美が質問を返す。
「それより、聡さんのお話を聞かせてください。お二人はご学友なのでしょう?」
明らかに二人の会話は得意先と言うより悪友の雰囲気が漂っている。すると、案の定、聡は二人の過去を話し始める。
「俺と郁未は何かある度に女子生徒にプレゼント攻撃を受けてね。その数を二人でよく競ったものだよ」
「凄いですね。やっぱりプレゼントはチョコですか?」
どんなプレゼントを貰ったか、しばし考える聡。パッと思い出すと手を叩いて『自分にリボン巻いて』と言いかけた。すると、郁未が横から閻魔のような顔で聡を睨む。