狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
「寺田さん。私、やっぱり……っ」

最後の抵抗。
だけど私のか細い声はもう、彼の耳には届かないみたいだった。

「ゴメンね?ここの壁薄いから。ちょっとだけ声、押さえてくれる?」
 
申し訳なさそうに、でもどこか興奮に掠れた声が、ゾクッと耳に囁かれた。

それから。
自分の後ろに、彼の熱源が押し当てられた。
ソファにギュウッと掴まる私が、前のめりに圧迫されていくのが分かって……
私はグッと唇を引き結んだ。

余裕を失った彼の両腕が、私の胸を締め付ける。

ねえ寺田さん。
私ね……本当は今、ちょっとだけ苦しいんだよ?

もし本当に“私を好き”でいてくれるならさ、もう少しだけ。
例えば私が今思っているコトを、アナタにキチンと伝えられるくらいまでは、待っていて欲しかった。

なんて思ってしまうのは、私が“幼稚”だからかな…


おっかしいなあ…
私は今『スキなヒト』と愛し合ってる筈なのに。

どうして目に、涙が溢れてくるんだろう。

どうして血が滲むほど、唇を噛み締めてるんだろう。
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