狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
パリン。
とうとうグラスが粉々に砕けた。
カウンターの店員さんが、慌ててそれを片付ける。
その横で手についた破片を払いながら、彼は額に青筋を立てて悪態をついた。
大神さんが、私の事をまるで自分の事みたいに怒ってくれたのが何だかとても……嬉しい。
胸の傷みがジワジワと退いていくのを実感しながら、私は彼に語りかけた。
「オオカミさん。
前に私に聞いたコトがあったでしょ。
『あいつが好きか。本当に?』って」
冗談めかして、眉間にシワを寄せ声色を低くマネた私に、彼は苦い顔をした。
「……何だよ」
「あの質問の正解はね、実はこうだったんです。『よく分からない』
だってそうでしょ?知らないんだもの、彼の事。これから知っていくつもりだったんだから…」
彼の隣にいた長い黒髪の女の人。
チラッと見えただけだったけど、彼の部屋の写真と似ていた。多分間違いはないだろう(私の視力は両眼2・0だ)。
これはあくまで想像に過ぎないが…
遠恋の末、別れたと言っていたカノジョさんと彼は、終わってなどいなかった。
2人で紡いできた長い時間。
溝ができてしまった時期に、たまたま彼が私と出会った。
恋人同士の時の狭間にフラりと訪れた珍客は、あの女(ひと)ではなく、むしろ私の方だったんだ………ぐすっ。
とうとうグラスが粉々に砕けた。
カウンターの店員さんが、慌ててそれを片付ける。
その横で手についた破片を払いながら、彼は額に青筋を立てて悪態をついた。
大神さんが、私の事をまるで自分の事みたいに怒ってくれたのが何だかとても……嬉しい。
胸の傷みがジワジワと退いていくのを実感しながら、私は彼に語りかけた。
「オオカミさん。
前に私に聞いたコトがあったでしょ。
『あいつが好きか。本当に?』って」
冗談めかして、眉間にシワを寄せ声色を低くマネた私に、彼は苦い顔をした。
「……何だよ」
「あの質問の正解はね、実はこうだったんです。『よく分からない』
だってそうでしょ?知らないんだもの、彼の事。これから知っていくつもりだったんだから…」
彼の隣にいた長い黒髪の女の人。
チラッと見えただけだったけど、彼の部屋の写真と似ていた。多分間違いはないだろう(私の視力は両眼2・0だ)。
これはあくまで想像に過ぎないが…
遠恋の末、別れたと言っていたカノジョさんと彼は、終わってなどいなかった。
2人で紡いできた長い時間。
溝ができてしまった時期に、たまたま彼が私と出会った。
恋人同士の時の狭間にフラりと訪れた珍客は、あの女(ひと)ではなく、むしろ私の方だったんだ………ぐすっ。