狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
大神さんには多大な迷惑をかけてしまったが。
あの夜の“ヒーリング”は、私には絶大な効果があったみたい。
それを境に私の心の中からは、寺田さんへの失恋も、ハヤト君へのトラウマさえもきれいに消え去っていた。
それこそ、“私ってば何をあんなに落ち込んでいたんだろう” と思えるくらいにサッパリと。
と、そこまでは良かったのだが…
同時に、私はとある症状に悩まされるようになっていた。
ちょうど今、その症例がリアルタイムで起こっているので見てみてくださいーー
「赤野…さん?」
ナヤミの元凶、大神カチョーが背後から私の肩をトン叩く。
「うわっ⁉…ははは、はいっ」
私は変に上ずった声をあげ、キヲツケの姿勢で席を立った。
「い、いや、座ってていいよ?この領収書なんだけどさ…」
彼の差し出すレシートの束を、極力手と手が触れないように、ブルブルと端を掴もうとした私は、バラバラとそれを取り落とす。
「うわっ、す、スミマセン」
「わ、悪い」
慌てて床に這いつくばりそれをかき集めていると、拾うのを手伝おうとした彼の手が偶然に、私のそれに重なった。
「「う、うわぁっ」」
「「ご、ごめん(なさい)!」」