狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
ハッと我に返った私は、すでに語る言葉を無くしていた。

「い、いえ。
えっと…わ、忘れました。
大した事じゃなかったんで…スイマセンっ、ちょっとトイレっ!」
「あ……」

たまらずその場を逃げ出した。


ハア……
私は、階下をトボトボと歩きながら、さっき漏れ聴いた会話を思い出していた。


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いやね、この姪がさあ。
向こうに行ってソロソロ2年になるんだけど……
ほら、よくある話。
『向こうがいいから帰りたくない』って言ってるの。

で、その両親。まあ僕の弟なんだけど…
ソノウチ向こうの男に騙されて、『永住する』とか言い出すんじゃあって、そりゃあ心配してるってワケ。

特に奥さんなんか寝込んじゃってさぁ。
何せ僕に似て(?)、美人の箱入り娘だからね~。

だーかーら!
 
そうなる前に僕の一押しの、将来最有望なウチの社員と何とかしちゃおうって、
オジさん考えたんだよね。


ねっ⁉これ、アキゃんにもい~い話でしょ。

だってコレさあ、北九州支社長のポジション付きだよ?

……絶対服従のアキちゃんなら、まさか『まだ遊びたい』だとか、見合いはイヤだなんて、ワガママいったりしないよね~?

年末の尻拭いもしてあげたことだし。


あ、予定ね。
彼女の帰国に合わせて、2週間後の帝国ホテル、正午から。


………万が一断るような事があったら

どうなるかは

分かるよね~~?

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