狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
物思いに耽るうちに、いつの間にか例の公園に足を向けていた。

あの日を最後に、朝のランニングも止めていたから、ここへ来るのは久しぶりだ。


ふと辺りを見回すと、チラホラと梅が咲いている。
ああ、もう春が近いんだ…
微かな梅香を吸い込むと、少しだけ元気を貰えた気がした。


やがて、いつも彼が待っていた池の端のベンチまでやってきた。


今は中年夫婦が腰かけて、午後のつかの間の日和を楽しんでいる。


私は池のほとりにしゃがみこむと、揺れる湖面をぼんやり見つめた。


ここでいっつも
朝御飯食べてたなあ。

バカな話ばっかりしてさ。
ホントみんな騙されるよね。
あの人結構ヌケてるのにな。

膝枕もしてあげたよね……

そうだよ。
あの時見つけたいっぱいの傷は、女絶ちしてできたって?
ホンっと笑っちゃうよね。私なんかの為に……

もうそんなコトも、これからはないんだなあ。



ああ、そうか。




私は後悔してるんだ。

始まりもせずに終わっても、やっぱりこれは “恋” だった。

失う痛みも知らないままに
『身を引く』だなんて酔いしれた
ヒロイン気取りの私は

なんて幼稚だったんだろう。
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