狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
ノロノロと帰路についた頃には、もう3時近かった。
自分の気持ちを確認したら、少しだけサッパリできた。

そうだ、もうすぐ春だもん。
切り替えていかなきゃね。


行きよりは心持ち軽快に、買い物袋をぶらぶらさせて、私は自分の部屋に続く階段を上っていた。

と。

オヤ?

階段を上りきった時、私はある異変に気が付いた。

ちょうど私の部屋の扉の位置を、大きな黒い塊が塞いでいるじゃあないか。

な、何よアレ。
………ニンゲンだ!

恐怖に立ち止まった私は、そこでよくよく目を凝らし、


絶句した。



「カ、カチョー‼?」



「遅かったな。お陰で俺はヒエヒエだ」
慌てて駆け寄った私に、彼は軽く左手を挙げた。

「ばかな、今はまだお見合いのはず……
まさか、まさかカチョー、
行かなかったんですか?!」


彼はバツが悪そうに目を逸らした。

「……甲高い声を上げるなよ。俺の耳にも、御近所サマにも響くだろ。
それよりも、部屋に入れてくれないか?
ケツが冷えて……寒いんだ」

一体いつからそこに居たのか。
ホンの少し触れた身体はビックリするほど冷たかった。


「ささっ、取りあえず中へ…」
私は急いで彼を部屋に入れると、暖房とコタツのスイッチを入れ、靴を靴箱に片付けた。
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