狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
帰り道の廊下。
私はつい嬉しくって、顔が笑うのを止められない。
……大神さん、最初ッからそのつもりで……
単なるスケベ心から女の子に声をかけたわけじゃなかったんだ。

「あの、大神さん」
お礼を言おうとした私を手で制し、彼はノンビリと笑った。

「赤野…ちょっとした誤解の、新人イジリなんかはよくある事だ。
皆他人の噂なんか、さほど気にしてないし、やりたくてやってるヤツも実は少ない。
他に楽しい事があれば、すぐ忘れて止めるよ。だからオマエも…あんまり拘るな?いつもみたいに笑ってろ」

「は、はい!こうですか?」
ニイッと笑う。

「そうだ、オマエはその顔が……」
彼は急に、モゴモゴと口ごもった。
「何ですか?」

「何でも…ない。
そ、そうだ。午後イチで出るぞ、先帰って車のキー取ってこい」

「え~、またですかぁ~?
ところでさっき言おうとしたこと、ちょっと気になるな、大神さ…」

「ウルサイッ、早く行けーーっ」
「は、はひぃぃ~~」

慌てて駆け出した私を、皆の笑いが追いかけた。

 
意外な盛り上りを見せたランチミーティングは、その後も定期的に続いた。
メンバーも段々と増えていき、和気藹々とイイ雰囲気て、私もいろんな課の人に顔を覚えてもらって……


私はもう、全然サミシくなんかなかった。
< 56 / 269 >

この作品をシェア

pagetop