君色キャンバス

 勢いよく扉を開いた。

 その瞬間吹き抜ける風。


 見渡す限りの蒼い空が周りには溢れている。

 この場所がなければ、俺は終わりでもなく、始まりでもなかった。


 過去を恨み、未来を信じることなんて出来なかった。

 それでも今、こうやってこの景色が再びきれいだと思えるようになったのは、間違いなく中野のおかげだった。


 君の笑顔はもう見れない。

 だから最後に見たいんだ、この景色を。

 脳裏に焼き付けて、そして俺は明日、父の全てを知るために行く。



「…………中野っ……」

 君の名前を呼ぶと心と、胸が痛い。


「一之瀬君!!」


 え。

 俺は思わず振り返った。

 そこにいたのは、まぎれもなく中野だった。

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