君色キャンバス
中野を見れば、あの頃と同じように透明な笑顔で俺を見ていた。
まるで今の時間を忘れないようにしっかりと焼き付けるかのように。
悲しくも、嬉しくも、楽しくもない。
ただ流れる時間を感じていたい。
君は、君を、君に、……
伝えたい言葉はきっと……、
「好きだ」
「……知ってる」
恥ずかしさなんてこれっぽちもなかった。
ただこの時間を食い止めたいと思ってしまう。
俺は中野に近づくと、中野は目をつぶった。
その瞬間に唇に触れた。
――――
――――……
空を仰げば相変わらず蒼に染まっている。
“さよなら”なんて言えなかった。
きっと俺達はまた逢えると信じていた。
いや、そうじゃないとならなかったんだ。
だって確実に君だけを愛していたから。