君色キャンバス

 北村君の金髪の髪が黒色になっていた。

 そして耳についていたピアスも1つもなくなっている。



 思わず口をパクパクさせながら呆然と立ち尽くしてしまう。


 北村君は予想通りの反応といったところで、私の近くまでつかつかと近寄る。


「俺は絶対あいつの幻影を壊すから」


 ニヤッと笑う。

 今まで通り、あの余裕をもった笑い方で。


「そ、そんなの……無理に決まってるでしょ」

 
 なんだか北村君の目が合わせられない。

 
 だって北村君の眼があまりにも真剣だから。


「ま、こんな風に奈津に接したところで上手くいかないってことくらい、俺だってガキじゃねーから理解してる。

 だから……髪染めて、奈津の前に来たんだよ」

 
 ポンと私の頭に手を置いて、そこからは一回も振り返らずに校舎の中に消えて行った。


 足の力が一瞬で抜けて、ヘナヘナとその場にしゃがみこんでしまう。



――あんなの、ありえない……!!


 心臓がドクドクと加速する。

 顔中がまるで熱湯でも浴びたくらい、熱くなってる。



「……やだ……!!」


 言葉とは裏腹に北村君が私の中で大きくなってくる。

 これ以上、私を壊さないで。


 
 そっとまた鍵を取り出し、一之瀬君を思い出す。



 



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