君色キャンバス

 一之瀬君に逢いたい。

 一瞬でもいいから。

 私のこの不安定な気持ちを消してほしい。


 大好きで、好きで好きで。

 ……その想いだけじゃ、これから先……やっていけないよ。



 * * *


「はー、北村君は奈津ぞっこんですな」

 さっきの一大発言を聞いていた菜穂が天井を仰ぎながら話す。

「どうすんの? あれ、絶対奈津のことマジだと思うな~~」


「……あっ、あんなの北村にとっちゃあただの遊びでしょ? あの人中学の頃から女子にモテモテで、私なんか下僕のように扱われてきたんだから!!」

「ほー、愛されてるじゃんね?」

 澪に話題を振る。

「ああいう男くらいが、おこちゃまの奈津にはいいかもよ?」


 あの澪までが菜穂の意見に賛成しているなんて。

 由紀ちゃんも「そうだよ!」と、3人揃いも揃って同意権。


 
「わっ、私は!! 一之瀬君が好きなのーー!」

 廊下に響き渡るくらい、声を張り上げると目の前にいたのは、なんとも話題の渦中にいる北村君だった。


「それは俺に対する挑戦?」

「ちがっ!!」

 顔が真っ赤になる。

「あのーここで提案なんですが! ダブルデートしません?」


――はっ?


 何言ってるの、菜穂。


 そう口は動いているのに、言葉に出ることはなくて完全から回り状態。
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