君色キャンバス
 
 私も書こうか。

 いつもなら雑念が入っていると、書けないのだけれど、今日は一之瀬君の風景が私の世界を作ってくれたお陰で、屋上に居るような感覚にさせてくれた。

 シャーペンを持っている右手が、勢いにのって書き進む。

 心に流れる想いを、書き記す。


 真っ白な世界から、自分の世界を書いていく。


「……出来た!」

「見せて?」

 おずおずと差し出すと、また真剣な目をして私の詩を見た。

 数分が経ち、私にルーズリーフを返すと、

「この詩のモチーフってやっぱ屋上?」

 その言葉に私は思わず眼光を開いた。
 だって一之瀬君に言った言葉は、私が知って欲しい部分だったから。

「うん、屋上。屋上って狭い空間なのに何だか広く感じない? それってさ周りの景色が筒抜けだからだと思うんだ。しかも手を伸ばしたら空に手が届きそうな気もしてくる。だから……」


「だから、“蒼”の手か――」

 蒼の手、それはもがき続ける未来に届く空の手。

 そう考えて書いた詩。


 その詩の意味も一之瀬君は分かってくれた。

 さすがだね。
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