君色キャンバス
自分でも分かってるんだ、ほんとはね。
逢いたいなんて思っちゃいけないことくらい。
私とはもう道が逸れてるのに、いまだにひきずってる。
逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて――。
でも、“逢えない”。
「私……もう、いいや」
「へっ?」
「一之瀬君のこと、忘れる」
菜穂にわざと笑って見せる。
菜穂は私を驚いた表情で見つめていたけれど、しだいにその表情は変わっていって。
お互い笑顔になる。
思い出す度に胸が痛くなるくらいなら、忘れよう。
どんなに手を伸ばしても、テレビの中にいる一之瀬君を見ても、それは“幻想”。
作られたものでしかない。
ずうっとひきずるよりも、今を信じよう。
……その方が少しはこの満たされない想いが、満たされるから。