君色キャンバス

 それなのに、榊原さんはまったく怖気ずく気配さえも見せずに、ニヤッと笑みを浮かべた。


「ははっ! ははははは!! お前、知りたいのか?」

「な、ななんだよ?!」


 掴んでいた手が緩んだ瞬間、榊原さんは俺の腹を殴った。


「うっ」

「いいかげん、目を醒ませっ! お前がそんなんだから、そんなんだからっ……教えれないんだ」


 そう言った榊原さんの目からは涙が溢れていた。


 その光景をぼうっと見て、俺は記憶を失った。



 * * *

< 116 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop