君色キャンバス

 今宵は満月――。


 私はルーズリーフを1枚取り出し、中学生の頃から大事にしているシャープペンシルでまた詩を綴る。


 今日は満月。
 そのせいか、夜空も明るく見える。


 思わず部屋の電気を消して、窓からその月を時間の感覚さえも忘れて魅入ってしまう。


 キレイ――。


 この満月の下に、私は居るんだ。


 なんてちっぽけで、なんて小さな存在なんだろう。


 
 私はふと自分の両手を見つめた。


 この両手に私は何を掴もうとしているの?

 過去? 未来?



 それとも――絶望?



 移ろい行く心に、惑う満月。

 私はいつのまにか足下を見失ってしまっている。


「一之瀬君」


 ふと呼んでしまう大好きな人の名が自分の弱さに、思えてしまった。



 その瞬間、いきなり携帯のバイブが自分の部屋に鳴り響く。
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