君色キャンバス

 あわてて携帯を手に取ると、そこには登録していない電話番号が液晶画面に映った。


 なんとなく、予感がする。


 私は殆ど迷うことなんかなかった。


「はい」

『…………』

 無言。

 
 でも、分かる。


 この人は、誰なのか。


「一之瀬君!!」


『………………中野』


 聞き慣れた、一之瀬君の声。

 でももうずうっと逢っていなかったせいか、まだその声は不確かだった。


「一之瀬君、一之瀬君……っ!」


 何度も何度も呼びたくなる。

 声が聞きたくて、聞きたくて。


 沈黙さえも作りたくない。


『凄く、逢いてぇよ……、中野に』

「わ、私も! 一之瀬君に逢いたいっ」

『俺には中野が必要なんだ』



 涙が止まらなくなった。

 流れても流れても止まらない。


 気持ちが溢れ出して、どうしようも出来ない。
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