君色キャンバス
「なんか……色々と話したいことはあったはずなのに……、逢って見ると言葉が出てこないや」
「俺も」
中野はまた優しく笑う。
「でも……。
これだけは言わせて」
「ん?」
「――私、一之瀬君が大好きです」
一陣の風が吹き抜けた。
気がつけば。
俺と中野の距離は縮まっていて、手を伸ばしたら中野の頬に手が当たった。
触れた瞬間、俺の中の時は止まる。
そっと中野にキスをした。
儚い夢のように見えた。
唇が離れると何かの糸が切れたかのように、中野は泣いていた。
流れる涙を俺の手で拭うとあの笑顔。