君色キャンバス

「だいすきっ!」

 その一言を言うと同時に中野は俺に抱きついてきた。

 
 俺も中野の背中に手をまわし、目を閉じた。

 中野の体温や心臓の音が直に響いてきて、本当は立っているのもやっと。



 ……何かが、ほどけてゆく。

 愛しさが込み上げる。


「――中野にずっと逢いたかった……」

「私もだよ……」


 
 ぎゅっと強く中野を抱きしめる。

 そこからはもう何もかもが溶けていった。


 眩しい光が川をきらきらと輝かす。

 その目の前には俺が16年間生きてきた証を象徴する家。


 
 この場所が俺の原点。


「……ずっと側にいられたら――」


 どんなに幸せなんだろう。



「いちのせっ、君……!」


 中野は俺から離れると俺の心臓あたりに手をおいた。

 その手を今度は自分の心臓の位置にもっていく。


 そしてその手を握り、勢いよく空に向かってつきあげた。


「繋がってるよね、ちゃんと」


 ああ、駄目だ。

 もう、限界だ。


 中野の言葉に。

 

 
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