君色キャンバス

 何もかもが奪われる。


 中野はそっと自分の首につけていたものをはずした。


 そして俺の手のひらにそっと乗せた。


 それはまぎれもなく俺の家の鍵。


 あの時中野に渡したもの。


「この鍵はやっぱり一之瀬君のもの。
 私じゃあこの鍵は責任不足。


 この鍵は一之瀬君の弱さなんかじゃない。

 ……ずっと守らなきゃいけないもの、でしょう?」


 

 受け取った鍵。

 その鍵を持つと、今までの父と母のことが鮮明に蘇る。



 今までずっと。

 ずっとずっと。


 隠してきたんだ。

 

 気持ちを見せることを。
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