君色キャンバス
思わず一歩後ずさりしてしまう。
けれど下がっても最終的には下がれないくらいの距離に行き着くわけで。
気がつけばもう下がれない位置まで達していた。
思わず目を閉じてしまう。
その瞬間、“何か”が私の髪に触れた。
閉じていた目を開くと、
「そんなとこに突っ立てから、中野に埃ついてた」
と一之瀬君は言った。
……どうやら私の髪についていた埃をのけてくれた……みたい。
二度目の、恥ずかし過ぎる妄想にさすがに今度は耳まで真っ赤になってしまった。
大体、私は一之瀬君と2人きり。
しかも今夜はお泊り。
今まで好きな人なんていなかった私には、とてもとても耐え難い状況なわけで。
「……中野、さっきから大丈夫か? なんか顔色も悪いよ?」
「えっ――?」