君色キャンバス

 一之瀬君の手が頬に触れた。

 やっぱりその手はさっき額に触れたときよりも何倍にも温かかった。


「やっぱ……いいな」

「……え?」

「中野といると、ほんと色んな気持ちになる。

 生きてるってこういうことなのかな」

 そう言って少し照れてはにかんだ。


 
――生きてる……。


 私はただただ今の日常が全てで、それだけで良かった。

 一之瀬君に出逢う前までは。


 想いって自分を変えるね。

 初めて知った恋がこんなに私の中で大きくなっているなんて。


 でも、全然足りない。
 
 もっと知りたいって思ってしまう。

 欲張りになってしまう。


 一之瀬君の触れた手に私は自分の手を重ねた。


 そして目が合った瞬間、もう離れることなんて出来ないんじゃないかと思ってしまう。



「……ずっと一緒に」

「……うん」


 私たちはまだ幼くて、これから先のことなんて見えなかった。

 ただ信じていたかった。


 あなたの隣に一生一緒に居れる未来を。



 


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